工場長の製作日記 114ページ目

2026年8月5日(水) 『「真榊台」の製作風景』


神事の場において、祭壇や神棚の左右に奉斎される祭具「真榊(まさかき)」。五色絹の幟の先端に榊を立て、三種の神器を掛けて用いられる大切な道具です。今回は、その真榊を足元でしっかりと支える「真榊台(箱部分)」の製作風景をご紹介いたします。

写真1


真榊台の構造には、「井桁組(いげたぐみ)」と呼ばれる日本の伝統的な組み方が用いられています。
まず最初に取り掛かるのは、前後の「側(がわ)」づくりです。上下の桟(さん)に一本一本の柱を立てながら、側板を丁寧に組み込んでいきます。この際、上下の桟と柱が正確な直角を保っているか、スコヤ(直角測定器)で何度も確かめながら慎重に進めていきます。

前後の側が組み上がったら、今度は左右の下桟をはめ込んで前後を繋ぎ、底板を収めます。この底板には、真榊の棒を差し込むための「ほぞ穴」を掘った板があらかじめ張り付けてあり、これが後に棒を立てる際の重要な受けとなります。続いて左右の側板と上桟をはめ込むことで、ようやく箱の形がひとつに見えてきます。

写真2


この工程で特に神経を使うのが、左右の上下桟と、前後の上下桟を組み合わせる「しゃくり(溝加工)」の深さです。浅すぎても深すぎても、組み合わせた際にわずかな段差が生じてしまいます。ミリ単位のズレも見逃さない正確な加工は、まさに熟練した職人の腕の見せどころです。

組み合わせがぴたりと決まると、木と木の継ぎ目には一分の隙間もありません。最後は玄能(げんのう)で丁寧に叩き込み、部材同士をしっかりと密着させていきます。木肌に傷がつかないよう、当て木を挟みながら少しずつ力を加えていく加減も、長年の経験があってこその技術です。こうして、真榊台の頑丈な箱の部分が完成しました。

写真3

写真4


箱が完成したら、次は各面に格子(こうし)を張り付けていく作業に入ります。この工程では、先ほど組み立てた箱本体の直角がきちんと出ていなければ、格子と桟の接着部分がきれいに収まりません。さらに、格子の長さや、桟に対する角度(45度)が正確に合っていなければ、隙間ができたり寸足らずになったりしてしまいます。ここもまた、職人の腕の見せどころです。

写真5

写真6


そしていよいよ最終段階、蓋(ふた)を合わせていきます。あらかじめ幅を少し大きめに作っておいた板を、鉋で少しずつ削りながら箱の大きさに合わせていきます。一回一回丁寧に鉋をかけては箱に当てはめ、という地道な作業を繰り返し、隙間なくぴったりと収まるよう微調整を重ねていきます。

2枚の蓋を同時にはめ込み、すっと吸い込まれるように美しく収まれば完成です。ここで鉋をかけすぎてしまうと、今度は逆に隙間ができてしまいます。せっかく箱の部分がきちんと組み上がっていても、最後の蓋が合わなければすべてが台無しになってしまいます。最後の最後まで一瞬も気を抜けない、まさに職人の腕の見せどころです。

写真7


仕上げに、中央へ棒を差し込めば、宮忠の真榊台が完成いたします。こうして振り返ってみると、ひとつひとつの小さな部材が、直角、しゃくり、角度、そして最後の一削りに至るまで、すべて職人の手仕事によって支えられています。

これからも良いものつくりに勤しんでまいります。

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