2026年5月15日(水) 『持送式神棚板製作の一部』
持送式神棚板の製作をおこなっています。
従来、この神棚板ではオプションで「彫刻なし」を選ばれた場合、持送板は糸鋸で外形を切り出し、サンドペーパーで仕上げるのみという、比較的シンプルな加工でした。
しかし現在は仕様を見直し、すべての持送板に「鎬(しのぎ)」の彫刻を施すようにグレードアップしています。
鎬とは、両面から三角形に削り出すことで生まれる、山状の美しい線のこと。
「鎬を削る」という言葉があるように、両側から中心へ向かって彫刻刀を入れ、左右の角度と深さを寸分違わず合わせていく必要があります。
片側をわずかに削りすぎれば、反対側もそれに合わせて調整しなければならず、両面のバランスが整ってはじめて、凛とした一本の中心線が現れます。
熟練の彫刻師が刃を入れる姿は一見すると簡単そうに見えますが、見習いの頃は中心線がうまく出せず、何度も刃を入れ直して彫刻が一回り小さくなってしまうこともあったといいます。 それほど繊細で、経験と感覚が求められる技術です。
鎬が入った持送板は、全体が引き締まり、神棚全体の品格が一段と高まります。
ただ支える板ではなく、“祈りの場”を形づくる大切な要素としての存在感が生まれるのです。
伊勢宮忠では、こうした細部へのこだわりを惜しまず、伝統技術を随所に活かしながら、より良い神具づくりを追求しています。
