工場長の製作日記 104ページ目

2025年8月20日(水) 『お木曳車の製作』


神宮式年遷宮記念商品として、令和8年から始まるお木曳行事に合わせて「お木曳車 大」を製作しました。
実物に比べサイズは小さくとも、その構造や素材には拘りをもち、可能な限り忠実に再現しています。構造上の一部に相違はあるものの、基本的な仕組みは神宮や伊勢市内の各町が所有する奉曳車と同じです。

お木曳車の本体部分は、堅牢で美しい木目を持つ欅(けやき)を使用しています。
部材はまず木取り加工を行い、各パーツを整えたうえで、クリアー塗装を施します。塗装を行う理由は、木材の色味や木目といった自然な美しさを最大限に活かしつつ、耐久性を向上させるためです。透明な塗装が木の息遣いを封じることなく、年月を経ても安定した美しさを保ってくれます。

写真1


全ての欅材部品に塗装が施されたあとは、錺金具を取り付け、いよいよ組立工程に入ります。一台一台、職人が手作業で丁寧に組み上げていくため、どの工程も緊張感が伴います。

写真2

写真3


続いて鳥居や絵符を取り付けていきます。
木曽桧製の鳥居や絵符が取り付けられると、一気にお木曳車らしい姿となり、最後に丸太を模した丸棒を括り付ければ完成です。この丸棒も同じく木曽桧で作られており、全体に統一感を持たせています。

写真4

写真5


宮忠のお木曳車は、部材の選定から加工、塗装、組立に至るまで、職人が一つひとつ手作業で作り上げています。大量生産では決して生み出せない「温もり」と「精度」がそこに宿ります。限られた大きさの中で細部を再現するには、実物以上に繊細な技術が求められます。その積み重ねが、宮忠のこだわりる品質を支えています。

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